鎌倉市 川喜多映画記念館音声ガイド付き上映会

川喜多映画記念館の外観

 

映画配給会社 東宝東和(旧 東和商事)の創立者である川喜多長政・かしこ夫妻の住居跡地が鎌倉市に寄贈されて17年。夫妻の意思を継ぎ、映画に造詣の深い施設を作ろうということからこの記念館の設立へと繋がった。今年の4月1日に開館したばかりの鎌倉市川喜多映画記念館。毎日(月曜休館)映画に関する展示物を見ることが出来る。1ヶ月の内、2週間、映画の上映を行っている。

 

川喜多夫妻の年表の前に立つ和地さん

 

バリアフリー上映会を開くきっかけとなったのは、シティ・ライツの平塚代表との出会い。3年前に、今回インタビューを受けてくださった和地さんと平塚代表とある映画関係の会合で出会ったことをきっかけに、和地さんが第1回シティ・ライツ映画祭に参加され、視覚障がい者もこうやって映画を楽しめることを知り、新鮮な驚きを得た。そして川喜多映画記念館開館に合わせ、ぜひ音声ガイド付きでの上映会もと準備を進め、2010年9月5日(日)に初めての音声ガイド付き上映会を行う運びとなった。

終戦記念日を挟んでの上映会ということで、作品を『父と暮らせば』に選び、50 席全て観客で埋まる中、無事初上映会は終了。音声ガイド付き上映会については、まだ試みの段階ではあったが、担当の和地さんは、今後定期的に出来るようにと意欲満々。3ヶ月に一度、半年に一度であっても、定期的に開催して行く方向で検討して行きたいとのこと。もし出来るなら、小道具など、レプリカでも準備をし、作品内の物を触覚でも楽しんでいただけたらいいなという夢も語る。

 

記念館スタッフによる展示スペースの解説ツアー

 

今回の上映会終了後には、視覚障がい者のお客様にも展示物をご案内したいという、特別なはからいで、記念館スタッフによる解説付きの展示物の閲覧タイムもあった。ソフィア・ローレン主演映画のポスターは、写真技術が進んでいなかったため、 手書きであること。ひめゆりの塔の脚本家、水木洋子氏の脚本は、水木氏出身地の千葉県市川市が保存しているため、その市川市より借り受けで展示してあること。『父と暮らせば』の中で宮沢りえさんが着用した衣装が飾られていることなどなど・・・。細部にいたるまでご説明いただきながら、視覚障がい者も一緒に観覧した。また、記念館の庭にある古民家は移築したもので、かつては映画の撮影に使われたり、後には、海外からのお客様を、日本の情緒漂うこの家で川喜多夫妻がもてなしたというエピソードも披露された。

海外の素晴らしい映画を日本に伝えた川喜多夫妻の遺志が、映画と接する機会の少ない、視覚障がい者の方々にも十分に伝えられた、素敵なバリアフリー上映会となった。

 

(レポーター:森川 加奈子)

長岡アジア映画祭と長岡音声アシストの会

長岡音声アシストの会の皆さん

 

新潟県長岡市で年に一度、一週間にわたって行われている、長岡アジア映画祭。今年で15回を迎えるこの映画祭では、7年前から毎回1作品、音声ガイドつきでの上映を行っています。今年の作品は9月11日に上映した『あぜみちジャンピンッ!』。音声ガイド担当は、長岡音声アシストの会の方々です。「私自身は音声ガイドの知識が全くなかったのですが、皆さんの活動を知って、是非、アジア映画祭でもバリアフリー上映をしたいとお願いしました」と、映画祭実行委員長の菅野さんは言います。

長岡音声アシストの会がスタートしたのは、やはり7年前の2003年。ある視覚障がい者の方からの「音声ガイドで映画を観たい」という声がきっかけでした。当時、録音図書のボランティアをしていたグループに「やってみませんか?」と声がかかり、その中の有志が「面白そう」と挑戦してみることにしたのです。最初の作品は『折り梅』、養護学校の父兄が主催するバリアフリー上映会で発表しました。以来、代表の前田久美子さんを中心に、試行錯誤を重ねながら活動を続け、現在では8人のメンバーで年4回の音声ガイドつき上映を行っています。ここ数年は、バリアフリー上映会とアジア映画祭の他に、地元のシネコンからも音声ガイドの依頼を受けるようになりました。

 

上映中、ライブで音声ガイドを読むボランティアさん

 

「『マリと子犬の物語』がシネコンで公開されたとき、視覚障がい者の方々から希望が強くあがって、急きょ私たちが音声ガイドをつけることになったんですね。地元の新潟中越地震での実話を元にした作品なので、関心が高かったのだと思います。突然のことで、準備する時間もなかったので、ぶっつけ本番で臨みました」。当日は、とにかく見たままをしゃべったという前田さん。「充分なガイドはできなかったかもしれませんが、何もないよりはましですよね。視覚障がい者の方に少しでも映画を楽しんでいただければ、と考えて、度胸を決めました」と笑います。

今回の『あぜみちジャンピンッ!』も、偶然にも新潟を舞台にした映画ですが、音声ガイドは事前にじっくり練り上げました。まずは前田さんが2週間ほどかけて、叩き台となるガイド原稿を作ります。
次にメンバーで読み合わせしながら「ここの表現は変えたほうが……」などと話し合って調整します。本番では、会場の楽屋においたモニターをみながら、若手メンバーの斉藤さんと波多さんが交代で、完成原稿を読んでいきます。マイクを通して会場にガイドが届き、視覚障がい者の方はラジオでそれを聴く仕組みです。

また、この作品では、主人公の女の子に聴覚障がいがあるため、手話で会話する場面がよく出てきます。そのたびにガイドで「手話での会話」と説明するとしつこく感じるので、途中からは手話シーンの字幕を音声ガイドとはトーンを変えて読むことで「手話」とわからせるよう工夫しました。

 

音声ガイドの台本を読むナレーター

 

上映終了後、ラジオを返却にきた、ひとりひとりに「どうでしたか?」と尋ねる前田さん。「よくわかった」「ちょっと速かった」など、それぞれの感想をしっかりと受け止め、次回の上映に生かします。

「毎回、できるだけ多くの方に、音声ガイドを体験していただきたいと思っています。視覚障がい者の方はもちろんですが、晴眼者の方にもこういう映画の楽しみ方があることを知って欲しいので、積
極的にラジオを貸し出しています。こうして音声ガイドの活動を次の世代に、自然にうまく繋げていけると嬉しいですね」

(レポーター:こめたに)

第3回 City Lights映画祭

画像:トークショーの様子

シティ・ライツは、2001年4月より東京を拠点に「視覚障がい者と一緒に映画を楽しむ環境づくり」をしているボランティア団体。 そのシティ・ライツの夢は、いつでもだれでも当たり前に立ち寄れる、バリアフリー映画館づくり。 その実現に向けて踏み出したのが「City Lights映画祭」です。 年に一度、みんなが元気になれるコミュニティ空間としてのバリアフリー映画館を、 この City Lights 映画祭で実現しています。

今年は、2010年4月29日 東京・両国の江戸東京博物館 大ホールにて第3回City Lights映画祭が開催されました。 シティ・ライツは、視覚障がい者も晴眼者も、一緒に活動に取り組むのがモットー。 映画祭実行委員のメンバーにも多数の視覚障がい者が参加し、まだ映画の楽しさを知らない人たちに、映画の素晴らしさを伝えたる活動をしています。

山田監督よりいただいた色紙の言葉「良い映画は、良い観客が創る」

当日、会場は満員御礼。 中には、遠く九州から駆けつけたお客様や、鳥取からボランティアに参加した方もいらっしゃいました。

上映作品は、日本映画の『虹をつかむ男』とミュージカル映画の金字塔『雨に唄えば』の2本立て。トークショーのゲストには、山田洋次監督が出演し『虹をつかむ男』の撮影秘話だけでなく、山田監督とバリアフリー映画の原点や、音声ガイドをどんな風につくっていってもらいたいか?など、大変貴重なお話を聴く事ができました。

来年10周年を迎えるシティ・ライツ。 次回はどんなチャレンジをするのでしょう?
第4回映画祭もご期待下さい!

City Lights映画祭公式サイト映画祭ブログ